くまの窓 ~柔道家・柔道整復師・大学教員のいなじのブログ

柔道家で、柔道整復師で、大学教員のいなじのブログです。

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包帯

昨日の夜、21時半。
わたしが仕事を終え帰宅しようとしていると、教員室にわたしあての電話がかかってきた。

電話の主は、2年生の学生さん。
わたしは彼の担任ではないのに、どうしたのかな?と思い電話を受ける。

すると、彼のお母さんが手をケガした、と。
さらに、今は救急指定の病院にいる、腫れていて痛みが強い、当直は整形外科ではなく外科の先生、救急車が一台来てしまって後回しにされそうだ…云々。
切羽詰った声で、どうしたらいいですか、どうしたらいいですか?と繰り返す。

わたしは、受傷の状況などいろいろ話を聞いて、彼のテンパリぶりとは裏腹に、お母さんは重症ではないと思った。
何より、病院に来ているのである。外科の医師が診てくれるのである。

「大丈夫だよ。ちゃんとお医者さんが診てくれるんでしょ。あとは帰ったら氷で冷やしてあげてや。お風呂はダメだよ」

いちおう、彼にわたしの携帯の番号を教えて、電話を切った。

でも、気になる。わざわざ学校にまで電話をくれたのである。

今日は雨だったので、たまたまクルマで出勤していた。
帰り道、少し遠回りして、彼らがいる病院に寄ることにした。

病院に着いたら、もういなかった。
受付の人に聞いたら、ほんの数分前に会計を済ませて帰った、と。

意外と短時間で処置が終了したということは、やはり重症じゃなかったんだな…と思いながら、クルマに戻る。
すると携帯に電話がかかってきた。

「先生?オレ、いま○○薬局の前にいるんですけど…」
どうやら、離れたところから病院の玄関から出てきたわたしを見て、
電話をくれたようだ。彼のところまで行く。

「どうだった?」
「いや、骨折はないから大丈夫って言われただけで…診てもらってもいいですか」

お母さんはクルマの助手席に乗っていた。
いつもお世話になります、の挨拶もそこそこに、わたしは片膝だけ運転席に乗りかかるようにして、お母さんの手を見せてもらった。

包帯も何もしていない、腫れた手はハダカのままである。

「何もしてくれなかったんですか?」
「ええ、レントゲンだけ見て、骨折はないから大丈夫ってそれだけでした」

聞くと、その医師、触診(実際に触れて症状を確認すること)をしなかったらしい。

触診は「三診」のひとつ。
三診とは問診、視診、触診。基本である。
レントゲン(正確には単純X線検査)はあくまで補助的なもの。

触診したら、やはり骨折ではないと思えた。
レントゲンのコピーをもらっていたので、車内灯で確認。
やはり骨折はない。

ただ、骨折かどうかが問題ではない。
骨以外のどの組織が、どのように、どの程度損傷したか。

お母さんにはこのケガに関するわたしの判断と注意点を伝え、
ほねつぎのたまごには帰った後の処置を伝えた。
重症だったら学校に戻って、学校にある材料で処置をしようと思っていたのだが、そこまでの重症ではないと判断した。

医師から彼らに、骨折以外の、きちんとした傷病名を伝えられていたのなら、
わたしはこんなでしゃばったことはしない。

でも「骨折ではない」しか言われていない、さらに包帯のひとつもないのだったら、
あとは外傷を治療することが法的に認められているほねつぎが対応してもいいだろう。

お母さんには、明日(すなわち今日)、学校にご足労願って、
症状を確認させていただくことにした。

「この子に包帯が巻けるんでしょうか」
「大丈夫です。学校でたくさん練習してます。だよな?」
「はい!大丈夫です」

彼らのクルマが出た後、わたしは自分のクルマの中で、強まる雨の音を聴きながら、しばし考えた。

なんで、痛い痛いと言って来院した患者さんのその患部を、触れることさえしなかったの?
なんで、あんなに腫れているのに、包帯のひとつも巻いてあげなかったの?
骨折じゃなかったから?
骨折じゃなかったらケガじゃないの?
骨折以外のケガは処置に値しないの?
レントゲンで全てがわかると思ってんの?
レントゲンでケガが治ると思ってんの?

患者さんは骨折かどうかを知りたいだけで来てるわけじゃないんだよ。
痛みをなんとかしてほしいんだよ。


わたしは、わたしの師匠をはじめ、素晴らしい医師を何人も知っている。
粉骨砕身、医師が職業というだけではできない多くのことを乗り越えているひとたちを知っている。

わたしの師匠は、わたしたちほねつぎによくこう言ったものだ。

「患者さんには、毎回おみやげを持たせて帰すんだぞ。
今日、病院に来てよかったなぁ、と思って帰ってもらうんだ」

今まで、おい、そーゆーことやめてくれよ!という医師やほねつぎに出くわす、
今回と同じような経験は何度もしたことがある。
でも、あらためて出くわすと、あらためて悔しい。

もう一度書いちゃうけど、せめて患者さんに触れてほしかった。
包帯くらい巻いてほしかった。


包帯はほねつぎの商売道具。象徴である。

「包帯は国境を越えていく」

これは「国境なき医師団」のキャッチフレーズである。
包帯だって注射器やメスに負けないくらい、お医者さんの象徴である。


助かりました
らくになりました
安心しました
ありがとうございました



こんな言葉に支えてもらって、わたしたちは白衣を着ているんじゃないんですか。


悶々と過ごした台風接近の夜でした。

さて、これからお母さんの症状チェックです。行ってきます。
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