くまの窓 ~柔道家・柔道整復師・大学教員のいなじのブログ

柔道家で、柔道整復師で、大学教員のいなじのブログです。

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男はつらいよ

今晩も寒いな。
湯豆腐とかおでんとか、あったまるもの食べて一杯飲みたいな。

そんなことを考えていて、ふと思い出したので書く。


今からもう5年くらい前。
前に住んでいた家の近くの、いわゆる「縄のれん」に、女友達とふたりで入った。

初めて入ったお店は、古めかしい正統派の居酒屋。
カウンターだけ15席程度の、おかみさんともう一人のおばちゃんの
ふたりで切り盛りしている小さなお店。

先客は、ひとり飲みのおっちゃん、若い女性二人組、それに若いにいちゃんがひとり。
わたしたちと入れ替わりで、おじさんとおばさんのおそらくは夫婦が
「それじゃご馳走様~」と、出て行った。

L字型のカウンターで、わたしと友人は入り口近くの2席に座り、瓶ビールを頼んだ。


しばらく飲んでいると、にいちゃんが先客のねえちゃん二人にからみ始めた。

うっとうしいヤツだな、嫌がってるじゃん。
わたしと友人は顔を見合わせる。
まあしかし、それだけならよく見る風景であった。

にいちゃんがトイレに立ったとき、おかみさんが気をきかせて、
カウンターのいちばん奥にねえちゃんふたりを移動させた。

戻ってきたにいちゃん、今度はわたしたちにからみ始めた。
わたしは案の定男性だと思われており、友人とカップルに間違われる。

やれ結婚しているのか出会ってどれくらいなんだ、と、にいちゃん。
テキトーに話を合わせていたが、あまりにしつこいので、半分無視するようにした。
見ず知らずの酔っ払いを、まともに相手にしても仕方がない。

すると業を煮やしたおかみさんが、今度はにいちゃんの目の前で、
「お客さん、こっち移る?」と、わたしたちをカウンター奥に誘導した。
奥から、先客のねえちゃんふたり、わたしたち、おっちゃん、の順番になった。

にいちゃん怒るかな、とちょっとヒヤヒヤしたのだが、呆けたようにぼんやりしていた。
何せ酔っ払いである。

しばらくすると、にいちゃん、今度はおっちゃんのとなりに移動してきた。
白髪の角刈りのおっちゃん、けっこう怖そうなんであるが、にいちゃんはからみ始めた。

おっちゃん、さすが人生の大先輩である。怒りもせずにいちゃんを上手にあしらう。
でも、おっちゃんのそのフトコロの深さに、
にいちゃんが調子にのってきちゃった感じがありありとわかった。

にいちゃん、時々、疲れると黙る。
おっちゃんはやれやれとばかりに、テレビのニュースを眺めていた。

ニュースでは、誰か忘れたけど政治家の不祥事について放送していた。
おっちゃんはニュースを見て、「ったく、だらしねえなぁ」とつぶやいた。


すると!


沈没したとばかり思っていたにいちゃんが、いきなり大声を上げ立ち上がった!


「だらしねえとはなんだ!!!!」


次の瞬間、おっちゃんにつかみかかる。
おっちゃんは一瞬ポカンとして、それでも臨界点だったのだろう、


「なんだコノヤロウ!!!」


と、立ち上がり、にいちゃんの胸ぐらをつかむ。


店内騒然。


これはマズイ!


店内は、取っ組み合っているふたり以外は、すべて女性である。ワタクシを含め。

しかし、さっきにいちゃんにテキトーに話を合わせてしまったことから、
ここにいるメンバーには、わたしは男性だと思われている。

この状況を何とかするのは、3人目の男だろう…。

わたしは男ではない。
でも、なんとなく期待(?)に応えねばという圧迫感を、勝手に感じていた。
このにいちゃんは、どっちかというと華奢で、ひょっとしたら手に負えるかも。
いや手に負えるってこの暴力沙汰を治めるという意味で云々


この時わたしは、一瞬でそんなことを考えた。


で、取っ組み合いの仲裁は、「からだごと両者の間に入る」ということを、
わたしは柔道部男子の行動を見て、なんとなく学習していた。

わたしは、おっちゃんに背を向けるかたちで両者の間に割って入った。
そしてにいちゃんの手首を両手でつかんで、顔の横まで挙げた。


「てめえ、放せ!」

「放しません!」

「放せよ!」

「放しません!」


暴れようとするにいちゃんの腕を、手首を握って制止する。必死だった。
酔っ払ってフラフラしていて、膝やら足やらがとんでこなかったのはラッキーだった。

にいちゃんの腕を、わたしの腕は、なんとか抑えることができていた。
でも、怖くて、手も足もガクガク震えていた。
震えを隠すために、にいちゃんの手首を、全力で握りしめた。

その状態が、1分も続いただろうか。

おかみさんが110番しようと電話の受話器を上げたその時、
わたしたちと入れ替わりだったご夫婦が、再び店に入ってきた。

おじさんが、背後からにいちゃんに近づく。
そして話しかける。

「なんか騒がしいと思ったら。どうしたんだよ、さっきまで楽しく飲んでたじゃん」

おじさんは笑顔である。

「そんな暴れたらダメだよ、ほら、みんなびっくりしてるよ」

すると、にいちゃんの腕からちからが抜けた。


瞠目。

誰も傷つけない、見事な仲裁である。
人生経験の成せる技だろう。

この店を出てからもう一軒行って、その帰りに再び通りがかったのだそうだ。


塩をかけられた青菜のようになってしまったにいちゃんに、おかみさんが一喝。
「勘定はいいから出てって!もう二度と来るんじゃないよ!」と。

にいちゃんはふらふらと店を出ていった。



今思えば、背筋が凍る。
にいちゃんが刃物を持っていたらどうするんだ?拳銃を持っていたら?


この日、わたしが思ったのは、男って大変…ということである。

女性しかいない状況で、わたしは、見た目が男性というだけで
立ち上がらねばならないような気になってしまった。怖かった。

そして普段、いちおう女性として生きているわたしは、知らず知らずのうちに、
男性にそういう圧力をかけてはいないかと思うのである。

世の中では、女性に対する保護ばかりが言われたりするが、男性だって大変である。
そんな一端を垣間見る、また考えさせられた出来事であった。



男はつらいよ。



だからって、男はつらいのが当たり前、たたかえ、ガマンせい、ではないんだよね。
冬の夜、無益なたたかいなんかしてないで、あったかく一杯飲みたいものである。
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| よしなしごと | 23:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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