くまの窓 ~柔道家・柔道整復師・大学教員のいなじのブログ

柔道家で、柔道整復師で、大学教員のいなじのブログです。

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一生懸命の共鳴

数日前、突然、ある人物から数年ぶりのメールが来た。
タイトルは「すんごいご無沙汰しております」。


元気ですかぁ?!

わたくしごとですが、やっと私も結婚しました!
あの私が…

いなはどんな感じ?!


メールの主はミズエ。
これはアユミに報告だ!と思い、今度はわたしがアユミに数年ぶりのメール。


元気ですか?ミズエからメールが来て、結婚したそうです!
私も年とるわけだな~


アユミから返信。


アユミで~す 元気ですよ!
ミズエ結婚かぁ、めでたいですね!久しく会ってないですよ~

イナは元気ですか?いつもどぉりガッハッハァ~って笑ってるところが想像つきます
私も結婚して子育てしてます!相変わらずバスケも続けてますよ♪






ミズエとアユミ。

10年ほど前、わたしが勤めていた整形外科に通院していた、当時の女子高生である。
当時からわたしのことを、「センセイ」ではなく「いなー!」と呼んでいた。


なつかしいなぁ


携帯の画面を見ながら、笑顔になっている自分がいた。

そう、こいつらは、妹みたいな存在で。
何より、わたしに大事なことを教えてくれた患者さんだった。


ミズエとアユミは、同じ高校、同じ学年。
それぞれハンド部とバスケ部で、元はお互いの存在を知らなかった。
それが同じ時期に大きなケガをして、わたしの勤める病院に転がり込んできて、
そのうち待合室でなんだか仲良くなったという二人である。
幼なじみだったんじゃないかってくらい息の合ったコンビだった。


ミズエは膝関節の前十字靱帯断裂。
アユミは足関節の前距腓靱帯・踵腓靭帯断裂。

二人とも、手術した方がいいような大ケガだった。

でも、手術はしたくない!早くハンドに、バスケに復帰したい!と。

これは柔道整復師の出番である。
医師と連携をとりながら、何とか保存療法(手術をしない治療)で治そう!と、
わたしたちスタッフは懸命になった。

そしてそれに、よく応えてくれる二人だった。


わたしが勤めていた病院は、それはそれは混雑する病院だった。
申し訳ないのだが、リハビリの待ち時間は相当長い。


わたしたちの順番、全然まだですよねー

おまえらは別メニューやってこい

えええええー?!


というのが、毎日のお約束。


何すればいいですか

そうだな、ミズエはスクワット1000回。アユミはバランスボード1時間。

えー?!ヤダー!

それが終わったら腕立てと腹筋300回ずつ。

なんでー?!あしの怪我なのにー?!

うるさい。ホレ、行けっ


二人とも、ぶつくさ言いながら2階の通称「体操の部屋」に上がって行く。
そしてたっぷり汗をかいて、1階のリハビリ室に戻ってくる。


ちゃんとやったか?

やったよー!スクワット1020回もやっちゃったよー

バランスボード飽きたから、自転車もやってきたー

よし、じゃあ今日は帰ってよし

ええええー!ちゃんとリハビリもやってよーー!


ほかの患者さんは笑ってる。
ほかのスタッフも悪ノリしておちょくる。
そんなわけで、まことに騒々しい毎日であった。

彼女たちがえらいのは、1000回、と言ったら、ぶーぶー言いながらも、
必ずその回数をこなしてくるところ。
そして、わたしたちは運動なりからだのケアの仕方をきちんと教えるわけだが、
それを忠実に守ってくれて、わからないことは必ず聞いてくる。
したがって、こちらとしては受け身でない姿勢に乗ってプラスアルファの治療ができる。

わたしは、この頃まだかけ出しの柔整師。
前十字靱帯断裂も重症の足関節捻挫も、二人にだいぶ勉強させてもらった。

わたしも一生懸命で、やつらも一生懸命。
一緒に試行錯誤している、共鳴している感じがあった。


半年足らずの期間だったと記憶しているが、二人ともよく治った。
特にミズエは前十字靱帯損傷。このケガは、手術なしで治癒させるのは難しい。
しかしミズエは、保存療法で靭帯が癒合するという運のよさにも恵まれた。


もう来なくてもいいぞ

そう言われちゃうと、うれしいけど寂しいよー

部活みたいなもんだったからなぁ

腰が痛いから時々来るね







二人が病院に来た、すぐのころ。

ミズエの、コールドスプレーでつくってしまった生々しい凍傷、
アユミの、どす黒く腫れ上がった足首。
二人の、ギプスを巻かれながらこぼした涙、松葉杖をつく暗い表情。

最初は二人とも落ち込んでいたが、その後のリハビリに入ってからの前向きさが、
とにかく素晴らしくアツく、一生懸命だった。

手塩にかけた、というのはおかしな表現だが、
この二人は、とにかく一生懸命で健気で、かわいかった。
わたしだけでなくスタッフみんなに、こいつらのためにやってやろう!という空気があった。

「治す」という同じ目標のもと、患者と治療者がシンクロする。
これが柔道整復師という仕事の真骨頂なのだと思った。

あなたが治ると、わたしもうれしい。
わたしが治ると、あなたが喜ぶ。それがまたうれしい。



そしてその後も、二人との交流は続き。

わたしが当直の時に訪ねてくれたり、高校卒業後も進路の報告をしてくれたり。
アユミは、子どもの治療で病院に来てくれたこともあった。

ここ数年は忘れた頃にメールが来る、という感じ。
そんなこんなでいつしか10年の時が流れて、今回はミズエの結婚の報告である。


彼女たちの人生の、ほんの数ヵ月重なっただけの関係である。
わたしにとっては、何百人と診た患者さんのうちの、ほんの二人である。

でも、このような忘れ得ぬ患者さんがいて、
自分が柔道整復師として育ててもらってきたことを思う。



ミズエ、報告ありがとう。そして結婚おめでとう。


いつだったか、わたしがお盆の当直の時、箱アイスの「白くま」買ってきてくれたっけな。
あの時、ちょうど急患が来ていて、ミズエを待たせちゃったんだった。

待合室のミズエに「待たせてごめんよ」って声かけたら、「いな~、もう4本目だよ~」って、
困った顔して必死に溶けかけのアイスを食ってたミズエが忘れられないよ。
先に言えよ~、アイス持ってきたってさぁ。

あらためて、あの時はごめんなさい!
でもさぁ、今でも思うんだけど、「ぜんぶ食う」以外の選択枝はなかったのか?
そんなミズエを拾ってくれるダンナは、きっとやさしい人なんだろうなあ。
幸せになれよ!


ミズエ、アユミ。

二人のひたむきさに、かけ出しのわたしは、いろんなことを教わりました。
今さらだけど、ありがとう。


靭帯切ったらまた来いよ!
その時はまた、鬼のリハビリが待ってるんだぜ!


アユミ&ミズエ
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| 大切なひとたち | 23:04 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

とってもほっこりした気持ちをいただきました(*´∀`*)

私事ですけど、いやなことが重なって気持ちが荒んでたんです
こういうお話を聞くと、僕も今の関わりを大切に向き合わなきゃなぁってつくづく感じました♪

| 笹谷 | 2011/07/11 15:37 | URL |

Re: タイトルなし

>笹谷さま

コメントありがとうございます!

仕事で出会ったふたりでしたが、どんどん治っていく若さとか、
なんでも素直に頑張る純粋さとか、たくさんの刺激を受けました。
治療していて楽しかったです。
こころが荒んだ時に、原点を思い出させてくれる存在かもしれません。

いやなことは柔道衣着て、汗と一緒に流しちゃってください!!

| いなじ | 2011/07/13 00:24 | URL |















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